外国人社員の退職は日本人と同じで大丈夫?企業が見落としがちな手続きとリスク

「外国人職員の退職は日本人と同じで大丈夫?」というテキストを背にレクチャーを行う女性講師

外国人社員を雇用している企業の担当者様にとって、避けて通れないのが「退職」への対応です。
「日本人と同じ退職届をもらえばいいのでは?」 「社会保険の手続き以外に何か特別なことがあるの?」
このような疑問や不安をお持ちの人事・総務担当者様は少なくありません。

結論から申し上げますと、日本人と同じ対応だけでは不十分です。
日本人の退職は「雇用保険や社会保険の事務」で済みますが、外国人の場合はそれに加えて、入管法に基づく「在留資格の報告」という別の公的手続きが発生するからです。
この二段構えの手続きを理解していないと、知らないうちに企業側が法令違反を犯すリスクがあります。

この記事では、企業が行うべき法的手続き、外国人本人が行うべき入管への届出、退職理由から紐解く離職防止のポイントを整理して解説します。 もし自社だけで判断するのが不安な場合は、外国人人材紹介会社など専門家への相談も一つの選択肢です。

なぜ「日本人と同じフロー」ではダメなのか?
外国人の退職に伴う特有のリスク

外国人社員の退職において、企業が最も注意すべきは「在留資格(ビザ)」の扱いです。
日本人にはない法的ルールが存在するため、まずはどのようなトラブルが起きやすいかを知っておきましょう。

外国人社員の退職対応を誤ると“在留資格取消し”につながるケース

退職した外国人本人には、14日以内に入管(出入国在留管理庁)へ「契約終了」を届け出る義務があります。
この届出をせず、転職活動も行わないまま3か月以上が経過すると、本人の在留資格(ビザ)が取り消される対象となります。
企業側がこうしたルールを教えず、結果的に本人が不法残留(オーバーステイ)状態になれば、会社も「雇用管理が不適切」として法的トラブルに巻き込まれるリスクがあります。

また、企業側にはハローワークへの「外国人雇用状況の届出」を行う法的義務があります。
この退職時の届出漏れや遅延を繰り返すと、行政から是正指導等の対象となる可能性があり、その結果として「適正な雇用管理ができていない企業」と評価されるおそれがあります。
その結果、次に新しい外国人を採用してビザを申請しても、審査が非常に厳しくなったり、不許可になったりするといった深刻な実害が生じる恐れがあるのです。

社内トラブル・口コミ悪化を招きやすい退職対応ミス

退職時のコミュニケーション不足は、思わぬクレームを生みます。
特に、有給休暇の消化、退職金の有無、最終月の給与計算などは、文化や言語の壁から認識のズレが起きやすいポイントです。

「説明されていた内容と違う」といった不満が爆発すると、SNSや外国人コミュニティ内で「あの会社は対応が悪い」といった悪い口コミが広がります。 これは現在働いている他の外国人社員の不安を煽るだけでなく、将来的な採用力の大幅な低下を招くリスクとなります。

「日本人と同じ」で対応しがちなポイントと、その落とし穴

「日本人と同じ手順」で進めた際、企業が見落としがちな落とし穴は以下の3点です。
これらは、企業側が責任を持って「本人への案内」や「社内管理」を行うべきポイントです。

1. 届出先の「案内」漏れ(企業から本人へ)

日本人の場合、会社がハローワークへ書類を出せば完了ですが、外国人は「本人が入管(出入国在留管理庁)へ報告する」という別個の義務があります。 企業側が「あとは会社がやっておくから大丈夫」と誤った案内をしてしまうと、本人が義務を怠る形になり、将来のビザ申請に悪影響を及ぼします。

2. 「14日以内」という期限の管理(企業から本人へ)

入管への報告期限は「退職から14日以内」と非常に短いです。 日本人の離職票発行などの事務スケジュールに合わせていると、この期限を過ぎてしまうことが多々あります。退職日当日、あるいは事前に「14日以内に入管へ連絡するように」と、企業側から強く促す必要があります。

3. 退職理由の「合意」プロセス(企業と本人の間で)

「退職願(相談)」と「退職届(決定)」の区別がつかない外国人社員は多いため、書類の形式よりも「なぜ辞めるのか(自己都合か会社都合か)」の合意が重要です。 「よく分からないまま自己都合の書類にサインさせられた」と後から訴えられるリスクを避けるため、企業は平易な言葉で内容を説明し、双方が納得した証拠(面談記録など)を残す必要があります。

企業側が必ず行うべき「外国人退職手続き」チェックリスト

法的なトラブルを避けるために、企業側が確実に行わなければならない手続きをまとめています。
チェックリストとして実務にご活用ください。

①雇用保険・社会保険の資格喪失手続きと退職証明書の発行

基本的には日本人と同じですが、漏れなく対応しましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届:退職日の翌々日から10日以内に提出します。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届: 5日以内に提出します。
退職証明書・離職票の発行: 本人が転職活動や失業保険申請で必要とするため、速やかに発行します。

特に退職証明書は、本人が入管へ転職の届出をする際に必要となるケースがあるため、忘れずに手渡してください。

※厚生労働省の詳細は以下をご参照ください。
→「外国人を雇用する事業主の方へ」(厚生労働省)

②外国人雇用状況届出(在留カード番号等)の提出と期限

雇用保険に加入している場合はハローワークへの「資格喪失届」に外国人雇用状況を記載します。
雇用保険に加入していない場合は、別途ハローワークへ「外国人雇用状況届出」の提出が必要です。
(参照元:厚生労働省)

提出先: 管轄のハローワーク
期限: 退職日の翌日から10日以内(または雇用保険手続きと同時)
必要な情報: 氏名、在留資格、在留期間、在留カード番号など

「採用時だけでなく退職時にも必要」という点を、人事担当者は再認識しておきましょう。

③退職理由・最終出勤日など社内記録で押さえておくべき情報

後々のトラブルを防止するために、以下の情報を社内記録として残しておくことを推奨します。

具体的な退職理由: 自己都合か、会社都合か(合意内容を明確にする)。
最終出勤日と離職日: 有給消化の記録を含む。
退職面談のメモ: 本人のサインがあれば、より確実です。

これらの記録は、将来的な監査対応だけでなく、離職率改善に向けた社内共有や、再採用の判断基準としても非常に価値のあるデータとなります。

退職する外国人本人が行うべき在留資格・入管手続き

企業が手続きを代行することはできませんが、本人が義務を果たせるよう案内してあげることで、円満な退職を実現できます。

退職後14日以内の「所属機関等に関する届出」とは

就労ビザを持つ外国人は、退職後14日以内に入管へ「所属機関との契約終了」を届け出る義務があります。
(参照元:出入国在留管理庁)

誰が: 退職する外国人本人 (特定技能ビザは企業)
どこに: 出入国在留管理庁(窓口、郵送、またはインターネット)
期限: 退職後14日以内

この届出を怠ると、次回のビザ更新が不利になったり、過料に処されたりする可能性があります。
企業側から「この手続きを忘れないでくださいね」と一言添えてあげましょう。

3か月以上無職で在留資格取消しリスクが高まる理由

就労ビザは「日本で働くこと」を前提に許可されています。 そのため、退職してから3か月以上仕事をしていない状態が続くと、在留資格の取消対象となるリスクが生じます。

正当な理由(病気や求職活動中である証明ができる場合など)があれば即座に取り消されるわけではありません。しかし、企業としては「早めに転職活動を始めるか、一旦帰国するか」といったスケジュール感を意識させるアドバイスができると親切です。

転職する場合・帰国する場合の在留資格の考え方

転職する場合: 次の会社でも現在の在留資格が該当するか確認が必要です。更新期限が近い場合は、更新手続きも重なります。
帰国する場合: 住民票の転出届、厚生年金の脱退一時金請求、住民税の納税管理人の選任など、公的手続きが必要になります。

在留資格の個別具体的な判断は複雑なため、最終的には入管の専門窓口や行政書士などの専門家に確認するよう本人に伝えてください。

なぜ外国人社員の早期退職が起きるのか?
主な退職理由と早期離職を防ぐポイント

せっかく採用した外国人人材が辞めてしまうのは、企業にとって大きな損失です。
退職理由を正しく理解し、対策を練りましょう。

外国人労働者に多い早期退職の理由(期待ギャップ・生活面の不安など)

早期離職の最大の原因は、入社前の期待と入社後の現実に差がある「ミスマッチ」です。
「もっと高度な仕事ができると思っていた」「生活面のサポートが想像以上に少なかった」といった不満は、入社直後の不安な時期に重なると、すぐに見切りをつける原因になります。
また、キャリアパスが不明確な場合も、成長意欲の高い若手ほど早期に離職する傾向があります。

定着率を下げるNGコミュニケーション・育成のパターン

現場でよくあるNGパターンは「指示があいまい」なことです。 「空気を読む」「適当にやっておいて」という指示は、外国人社員には伝わりません。 また、日本語レベルを考慮せずに専門用語を連発したり、逆に子供扱いするような態度も不信感を生みます。

「悪気はないが伝わっていない」ケースが非常に多いため、指示は具体的に、かつ書面や図解を併用することが改善の第一歩です。

退職を減らすために今日からできる「受け入れ・フォロー」の工夫

早期離職を防ぐには、入社後3ヶ月間の集中フォローが鍵となります。
定期的な1on1面談で悩みを聞き出すだけでなく、多言語での就業ルール共有や、気軽に相談できるメンター(教育係)の設置など、心理的な安全性を確保する工夫が必要です。まずは職場に馴染めるよう支援する体制づくりが、長期的な定着につながります。

退職対応を“採用力アップ”につなげるには?
専門パートナー活用という選択肢

退職への向き合い方一つで、企業の採用ブランディングは大きく変わります。
自社だけで抱え込まず、プロの力を借りることも検討しましょう。

退職対応を整えると採用コスト・定着率・企業イメージがなぜ改善するのか

「辞めるときまできちんと対応してくれる会社」は、外国人ネットワークの中で高く評価されます。 良い口コミはSNSを通じて広がり、紹介での採用や、求人広告への応募率向上に寄与します。 結果として採用単価が下がり、定着率が高まるという好循環が生まれるのです。退職対応を整えることは、攻めの採用戦略の一環といえます。

外国人人材紹介会社に相談できること(採用〜退職時サポートまで)

外国人人材紹介会社の役割は、単に条件に合う人材を引き合わせるだけではありません。
採用から定着、そして万が一の退職手続きまで、企業が抱える外国人雇用の課題を包括的にサポートするのが本来の業務です。

具体的には、採用前には「現場の受け入れ態勢」を診断し、入社後には多言語での定期面談を通じてスタッフの不安を解消します。
さらに、退職が発生した際にも、企業側のリスクを最小限に抑えるためのコミュニケーション支援や、本人への行政手続きの案内など、実務に踏み込んだ支援を受けることが可能です。

トレジャーへのご相談のご案内

外国人人材紹介会社「トレジャー」は、介護業界を中心に、外国人活用のプロフェッショナルとして多くの企業様を支援しています。

トレジャーをご活用いただくメリット

介護に特化した専門知識: 業界特有の事情に合わせたフォローが可能です。
伴走型サポート: 採用して終わりではなく、入社後の定着から万が一の退職対応まで相談いただけます。
豊富な人材データベース: 特定技能など、即戦力となる人材のご紹介が可能です。

具体的な事例や、自社の退職手続きに不安がある企業様は、下記フォームよりお気軽にご相談ください。
まずはご相談から、貴社の外国人活用を最適化していきましょう。

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