技人国から特定技能への切り替えが注目される理由|2026年の審査厳格化で何が変わったか

特定技能への切り替えと2026年の審査厳格化の理由を解説する日本人女性の画像.

「技人国が厳しくなったから、特定技能に切り替えよう」
2026年に入って、そう判断する会社が出てきています。背景にあるのは、入管による業務実態の審査の厳格化です。

実際に、技人国のまま接客や製造ラインの仕事をさせていると、次の在留期間の更新が認められないおそれがあります。
実際の仕事内容が特定技能の分野に当てはまるなら、切り替えは会社にとって合理的な判断です。

ただ、この記事を書いたのは、切り替えの話が「会社の更新リスク」だけで語られがちだと感じたからです。

特定技能1号に変わると、本人は家族を新たに呼べなくなります。
在留は原則5年までになり、永住に必要な期間の数え方も変わります。
外食業のように、受け入れ人数が上限に近づき、2026年4月13日以降は特定技能1号への変更が原則として認められなくなった分野もあります。

技人国から特定技能へ切り替えるかどうかは、実際の仕事内容だけでなく、変更後に本人の生活や将来にどのような影響があるのかまで踏まえて判断することが大切です。

この記事では、そのために必要な情報として、審査で何が厳しくなったのか、切り替えの条件と注意点、手続きの流れを入管庁の資料をもとにまとめました。

1. 技人国から特定技能への切り替えが進む理由は「審査の厳格化」

技人国は、専門的な知識や技術を必要とする仕事を対象とした在留資格です。
接客、清掃、調理、製造ラインといった現場作業を、仕事の中心として行うことは認められていません。
それでも実際には、「通訳」や「店舗管理」として採用されながら、日常的には接客や製造などの現場業務を担当しているケースも見られます。

4月15日の運用指針の改正では、実務研修の審査で提出を求められる資料が増えました。
新たに加わったのは、社内の組織図と、技人国の在留資格ですでに働いている外国人社員の勤務状況を示す資料です。

申請書に書かれた「通訳」「店舗管理」といった職種名だけでなく、実際の仕事内容が技人国の対象に当たるかどうかが、より重要になっています。

2. 審査厳格化①:2026年4月の技人国改正で変わったこと

入管庁は2026年4月15日、「技術・人文知識・国際業務の在留資格の明確化等について」を一部改正しました。
この文書は技人国の審査基準を入管庁自身が解説したもので、本文と別紙1〜6で構成されています。

変更点は4つあります。

① 通訳や接客など、言語を使う業務に語学力の基準が設けられました

今回の改正で新設された「別紙4 翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化について」には、次のように書かれています。

主に言語能力を用いる対人業務等に従事する場合は、申請人がCEFR・B2相当の言語能力を有していることを前提とし、当該言語能力を有していない場合は、上記「一定水準以上の業務」に従事するものとは認められません。

CEFR(セファール)とは、言語の運用能力を6段階(A1・A2・B1・B2・C1・C2)で示す国際的な指標です。
B2は上から3番目にあたり、日常的な話題だけでなく、専門分野の議論にもある程度ついていけるレベルを指します。

この基準は日本語に限りません。
業務で使う言語が英語や中国語などであれば、その言語についてB2相当の能力が求められます。

日本語の場合、入管庁は次のいずれかに当てはまればB2相当とみなすと定めています。

  1. JLPT・N2以上を取得している
  2. BJTビジネス日本語能力テストで400点以上を取得している
  3. 中長期在留者として20年以上日本に在留している
  4. 日本の大学を卒業、または高等専門学校・専修学校の専門課程や専攻科を修了している
  5. 日本の義務教育を修了し、高等学校を卒業している

日本語学校の卒業は含まれていません。
また、大学等の卒業で認められる場合には「専攻科目と業務内容に関連性が認められる場合に限ります」という注が付いています。ただし、文部科学大臣の認定を受けた専修学校の専門課程・専攻科の修了者については、関連性を柔軟に判断するとされています。

② 中小企業などは、提出書類が増えました

技人国の申請では、外国人を雇う会社が、規模や信用度によってカテゴリー1〜4に分けられます。区分によって提出する書類が変わり、カテゴリー1が最も少なく、3もしくは4が最も多くなります。

区分主な対象
カテゴリー1上場企業、国・地方公共団体、独立行政法人、公益法人など
カテゴリー2前年の給与所得の源泉徴収税額が1,000万円以上の企業など
カテゴリー3前年の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出した企業(カテゴリー2を除く)
カテゴリー4上記のいずれにも当てはまらない企業

一般的な中小企業はカテゴリー3、設立して間もない会社はカテゴリー4に当たる場合が多いです。

2026年4月15日以降の申請から、カテゴリー3または4の会社は、次の書類を追加で提出する必要があります(在留資格「技術・人文知識・国際業務」の案内ページ)。

  • 所属機関の代表者に関する申告書
  • 主に言語能力を用いて対人業務等に従事する場合、業務上使用する言語についてCEFR・B2相当の言語能力を証する資料

なお、在留期間の更新では、以前から継続して同じ業務内容に従事している場合、語学力の資料は提出不要とされています。

③ 「研修」として現場作業をさせる運用への審査が強まりました

「別紙1 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について」では、採用から1年を超えて実務研修に従事させる申請について、研修計画の提出を求めて研修期間の合理性を審査するとしています。この規定は改正前から設けられていました。

今回の改正で変わったのは、研修の相当性を判断するときに提出を求められる資料です。
改正前はキャリアステップと各段階の職務内容を示す資料だけでしたが、改正後は次の資料も対象になりました。

  • 社内の組織図
  • 現在受け入れている技人国外国人の勤務状況を示す資料

過去に採用した外国人社員の働き方まで確認される、ということです。

④特定技能・技能実習で受入停止になると、技人国でも新たに外国人を雇えなくなりました

現在の本文には、次の注があります。

「本邦の公私の機関」等(派遣先等機関を含む。)が下記の欠格事由の認定等がなされている機関である場合は、(略)その受入れ停止期間中は、原則として「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有する外国人を新たに受け入れることは認められません。

対象となる欠格事由は、外国人への暴行・脅迫・監禁、旅券や在留カードの取り上げ、手当や報酬の不払い、外出など私生活の自由の不当な制限、その他人権を著しく侵害する行為です。特定技能制度と技能実習制度の両方が対象になります。

つまり、特定技能や技能実習で受入停止処分を受けると、技人国でも新たに外国人を受け入れられなくなります。

3. 審査厳格化②:飲食店・ホテルで「できる業務・できない業務」が示された

飲食店:技人国では、調理も接客もできません

入管庁は「飲食店において外国人が就労する場合の在留資格について」という資料で、飲食店の業務ごとに、どの在留資格で従事できるかを一覧にしています。

業務技入国特定技能1号
(外食業)
特定技能2号
(外食業)
特定活動
(告示46号)
調理業務(仕込み、調理、盛付け等)×◯◯◯
接客業務(案内、注文伺い、配膳、片付け、会計等)×◯◯◯
店舗管理業務(衛生管理、従業員の管理・指導、在庫管理等)△◯◯◯
店舗経営(経営分析、経営管理、契約事務等)◯×◯◯
出典:出入国在留管理庁「飲食店において外国人が就労する場合の在留資格について」

店舗管理業務の「△」には注が付いています。技人国で店舗管理業務が認められるかは、店舗の具体的な状況や本人の活動内容・キャリアパスなどを総合的に考慮して個別に判断されます。そして、自ら調理業務・接客業務に従事することは認められません。

つまり、「店長」「店舗管理」という肩書でも、実際に厨房やホールに立っていれば、技人国では認められません。一方、特定技能1号(外食業)であれば、調理・接客・店舗管理のいずれにも従事できます。

ホテル・旅館:フロントや広報はできても、配膳や清掃はできません

ホテル・旅館については、別紙5「ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について」(令和8年4月改訂)で、許可・不許可の事例が示されています。

許可された業務の例

  • 外国語を用いたフロント業務、外国人観光客向けの館内案内
  • 本国の旅行会社との交渉での通訳・翻訳、従業員への外国語指導
  • 集客のためのマーケティングリサーチ、外国人観光客向けの広報
  • 宿泊プランの企画立案

不許可になった業務の例

  • 主な業務が宿泊客の荷物の運搬と客室の清掃だったもの
  • 駐車誘導、レストランでの料理の配膳や片付けだったもの
  • 採用後の最初の2年間、実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃を行う予定で、該当しない業務が在留期間の大半を占めるもの

別紙5では、フロント業務の最中に団体客が来て急遽荷物を部屋まで運ぶような、一時的な対応は直ちに問題にはならないとされています。ただし、そうした業務が結果的に主な活動になっていることが分かった場合には、在留期間の更新を不許可とする措置がとられる可能性があると明記されています。

4. 審査厳格化で、更新が危なくなる会社の特徴

入管庁の資料と公表されている不許可事例から、更新が危なくなる会社の特徴は次の4つにまとめられます。

① 求人票に「未経験可」と書いている

技人国の運用指針の本文には、次のように書かれています。

一般的に、求人の際の採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と記載のあるような業務内容や、(略)学歴又は実務経験に係る要件を満たしていない日本人従業員が一般的に従事している業務内容は、対象となりません。

学歴も実務経験も問わずに募集している業務であれば、技人国での説明は苦しくなります。

② 技能実習生やアルバイトと同じ仕事をしている

別紙3では、次の事例が不許可になっています。

電気部品の加工を行う会社の工場において、部品の加工、組み立て、検査、梱包業務を行うとして申請があったが、当該工場には技能実習生が在籍しているところ、当該申請人と技能実習生が行う業務のほとんどが同一のものであり、申請人の行う業務が高度な知識を要する業務であるとは認められず、不許可となったもの。

栄養専門学校において、食品化学、衛生教育、臨床栄養学、調理実習などを履修した者が、菓子工場において、当該知識を活用して、洋菓子の製造を行うとして申請があったところ、当該業務は、反復訓練によって従事可能な業務であるとして、不許可となったもの。

技能実習生と同じ現場作業であれば、技人国ではなく特定技能で受け入れるべき業務だということです。

③ 「研修」が予定より長引いている

「1年目は研修として現場に出し、その後は専門業務へ」という運用をしている会社は少なくありません。ところが別紙1には、次のように書かれています。

在留期間更新時に当初の予定を超えて実務研修に従事する場合、その事情を説明していただくことになりますが、合理的な理由がない場合、在留期間の更新が認められないこととなります。

外国人だけに設定された研修も認められません。

当該実務研修が外国人社員だけに設定されている場合や、日本人社員との差異が設けられているようなものは、合理的な理由(日本語研修を目的としたようなもの等)がある場合を除き、当該実務研修に従事することについての相当性があるとは認められません。

なお、日本人の大卒社員にも同じように行われる研修で、在留期間全体の大半を占めないものであれば、現場での研修も技人国の範囲内として認められます。

④ 過去に採用した外国人社員が、現場業務を続けている

別紙3には、次の事例が載っています。

ホテルにおいて、予約管理、通訳業務を行うフロントスタッフとして採用され、入社当初は、研修の一環として、1年間は、レストランでの配膳業務、客室清掃業務にも従事するとして申請があったが、当該ホテルにおいて過去に同様の理由で採用された外国人が、当初の研修予定を大幅に超え、引き続き在留資格該当性のない、レストランでの配膳業務、客室清掃等に従事していることが判明し不許可となったもの。

前に採用した外国人社員の働き方が、次の申請の審査対象になっています。
4月の改正で技人国外国人の勤務状況の資料が求められるようになったことで、この確認はさらに厳しくなります。

5. 技人国から特定技能へ変更できる?

変更できます。
日本に在留したまま、地方出入国在留管理官署に在留資格変更許可申請を行います。

ただし、次の3つを満たす必要があります。

  • 本人の業務が、特定技能のいずれかの分野に当てはまる
  • 本人が、その分野の技能試験と日本語試験に合格している
  • 会社が、雇用契約・支援計画・協議会への加入などの受け入れ準備を整えている

また、外食業のように、特定技能1号への変更が原則として認められなくなった分野もあります。

6. 技人国と特定技能の違い

技人国特定技能1号特定技能2号
従事できる業務専門的・技術的業務分野ごとに定められた業務(現場作業を含む)同左(熟練した技能)
対象分野分野の定めなし19分野(うち3分野は受け入れ開始前)11分野
在留期間更新の上限なし通算5年まで(例外あり)更新の上限なし
家族帯同可能原則不可可能
学歴・資格の要件業務に関連する科目を専攻した大学・専門学校等の卒業、または実務経験(原則10年、国際業務は3年)学歴不問。技能試験と日本語試験の合格(技能実習2号良好修了者は免除)学歴不問。技能試験の合格と実務経験
受け入れ人数の上限なし分野ごとにあり―
支援計画不要必要不要
協議会への加入不要必要必要
永住許可の「就労資格で5年」算入される算入されない算入される

特定技能2号は11分野に限られます。
介護、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業、そして2026年1月に追加されたリネンサプライ・物流倉庫・資源循環には、2号がありません。

介護の場合は、介護福祉士の資格を取得した方に向けた在留資格「介護」が別に設けられています。
そのため、「特定技能1号 → 介護福祉士 → 在留資格『介護』」という道筋になります。

7. 技人国から特定技能へ変更するメリット

技人国から特定技能ビザ(在留資格)に切り替えることについて、「ビザの格下げ(グレードダウン)」というイメージを持つ人も少なくありません。しかし、「特定技能」ビザと「技人国」ビザは性質が異なるため、決して「格下げ」ではなく、実際の仕事内容に合わせた在留資格の最適化と捉えてください。

特定技能1号では在留期間の上限や家族帯同など、本人にとって条件が厳しくなる点もありますが、会社にとっては、在留資格を実際の仕事に合わせることで、更新などの審査で問題になるおそれが減るという大きなメリットがあります。

会社にとっての具体的なメリットは、次の3つです。

① 現場の業務を、在留資格の範囲内で任せられます

技人国では認められない接客、清掃、ライン作業、配膳といった業務も、特定技能では、取得した分野で定められた業務として認められます。任せられるのは、取得した分野の業務に限られます。たとえば外食業で取得した人に、建設の仕事をさせることはできません。

② 研修の長さや業務内容を、入管に説明しなくて済みます

技人国で現場の仕事をさせている場合、更新の際に、会社が入管に対して「研修が予定より長引いていないか」「専門的な業務が主な仕事になっているか」を資料で説明するよう求められることがあります。

特定技能では、分野ごとに定められた現場の仕事そのものが認められた業務なので、こうした説明は不要です。
なお、定められた分野の業務をしているか、支援計画を実施しているかなど、特定技能としての審査は更新の際に行われます。

③ 専攻した科目と仕事の関連性を問われません

技人国では、大学や専門学校で専攻した科目と、実際の仕事に関連性があることが求められます。そのため、専攻と関係のない部署へ配置転換すると、技人国の対象から外れるおそれがあります。

特定技能では、専攻した科目は問われません。技能試験と日本語試験の合格で判断されます。

8. 技人国から特定技能へ変更するデメリット・注意点

前文で触れたとおり、特定技能1号には、在留期間の上限や家族帯同、永住への影響など、外国人社員本人にとって技人国より条件が厳しくなる点があります。

また、会社側にも、支援計画の作成・実施や協議会への加入など、新たな対応が必要になります。

本人にとっての注意点

① 特定技能1号は、通算5年が上限です

長く働いてもらうには、2号への移行か、介護であれば介護福祉士の資格取得を見据える必要があります。
自動車運送業、鉄道、林業、木材産業のように、2号がない分野もあります。

通算5年には、次の例外があります(入管庁「通算在留期間」)。

  • 通算5年に含まれない期間:産前産後休業・育児休業の期間と、病気やけがによる休業の期間(連続して1か月を超え、原則1年以下。労災の場合は3年以下)は、通算5年に含まれません。
  • 通算6年まで延長できる場合:2号に必要な全ての試験で合格基準点の8割以上を取っている人は、条件を満たせば通算6年まで在留できます。介護分野では、介護福祉士国家試験の成績で判断されます。延長には、不合格の場合は速やかに帰国するという本人の誓約と、会社が引き続き雇用し、合格に向けた指導体制を持っていることも必要です。

どちらも自動では適用されません。通算5年が満了する前(概ね3か月前)に、証明資料を付けて申請する必要があります。
また、一部の試験は現在延長の対象外です。

② 家族帯同が、原則としてできません

技人国では配偶者や子を「家族滞在」で呼べていた方も、1号に変更すると新たに呼ぶことはできません。
すでに「家族滞在」で日本に住んでいる配偶者・子については、「特定活動」への変更で在留を続けられる場合があります。
ただし個別の審査で、必ず認められるわけではありません。

③ 永住許可までの期間が延びます

永住許可には、原則として10年以上の在留のうち、就労資格または居住資格で引き続き5年以上在留していることが必要です。
この就労資格から、特定技能1号は除かれています。永住を目指す方にとっては、1号の期間はこの5年に数えません。

会社にとっての注意点

① 支援計画の作成と実施が義務になります

特定技能1号の受け入れ企業は、支援計画を作成し、次の10項目の支援を行わなければなりません。

  1. 事前ガイダンス
  2. 出入国の際の送迎
  3. 住居の確保や生活に必要な契約の支援
  4. 生活オリエンテーション
  5. 行政手続の支援
  6. 日本語学習の機会の提供
  7. 相談・苦情への対応
  8. 日本人との交流促進
  9. 転職支援(会社の都合で雇用契約を解除する場合)
  10. 定期的な面談(3か月に1回以上)・行政機関への通報

支援は、登録支援機関に全部または一部を委託することもできます。
全部を委託した場合は、会社が満たすべき支援体制の基準を満たしたものとみなされます。委託費用は会社の負担です。

② 協議会への加入が必要です

協議会は分野ごとに設けられています。令和6年6月15日以降の申請からは、在留資格の申請前に協議会に加入し、構成員であることの証明書を提出する必要があります。

変更の申請は、本人が行います

在留資格の変更は、本人が申請するものです。
家族、在留期間、永住への影響を本人が理解しないまま変更を進めると、後から事情を知った本人が不信感を持ち、離職につながるおそれがあります。

変更を提案するときは、本人にとって不利になる点と、2号などその先の道筋を一緒に説明してください。

9. 技人国から特定技能へ変更できないケース

技人国から特定技能への変更ができないのは、主に次の4つのケースです。

  • 業務が特定技能の分野に当てはまらない:特定技能は、定められた分野の業務しか認められません。
  • 試験に合格していない:技能試験と日本語試験の両方の合格が必要です。
  • 会社が受入停止処分を受けている:特定技能や技能実習の欠格事由で受入停止の期間中は、受け入れが認められません。
  • 分野の受け入れ枠が埋まっている:いま実際に起きているのが外食業です。

外食業は、すでに受け入れが止まっています

特定技能1号には、分野ごとに受け入れ人数の上限(受入れ見込数)が定められています。上限に近づくと、新規の受け入れが止まります。

2026年3月27日、農林水産省と入管庁は、外食業での新規受け入れを4月13日から原則停止すると発表しました。
当時、外食業の特定技能1号の在留者は2月末時点で約4万6千人(速報値)で、5月頃に上限の5万人を超える見込みとされていました。

予告どおり、2026年4月13日以降の申請から停止措置がとられています。

止まったものの中には、他の在留資格から外食業の特定技能への変更が含まれています。

3章で見たとおり、飲食店では技人国で調理も接客もできません。つまり、飲食店で技人国の外国人社員を現場に立たせている会社は、技人国の審査が厳しくなったうえに、特定技能にも移れない状況に置かれています。

他の分野の埋まり具合

分野受け入れ枠在留者数埋まっている割合
外食業50,000人49,060人98.1%(停止中)
飲食料品製造業133,500人100,769人75.5%
建設76,000人52,132人68.6%
介護126,900人79,884人63.0%
農業73,300人44,050人60.1%
全分野の合計805,700人425,961人52.9%
出典:出入国在留管理庁「特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年6月末時点・速報値)」

外食業は、発表から停止まで2週間半でした。切り替え先の分野が閉じるのは、思っているより早いということです。

10. 技人国から特定技能への変更手続きの流れ

技人国から特定技能への変更は、在留中に「在留資格変更許可申請」を行う形になります。流れは次のとおりです。

ステップ1:分野と業務を確認する

本人が実際に行う業務が、特定技能のどの分野に当てはまるかを確認します。
あわせて、その分野で新規の受け入れが止まっていないかも確認してください。

ステップ2:試験に合格する

特定技能1号には、分野ごとの技能試験と日本語試験の両方の合格が必要です。日本語試験は、日本語能力試験(JLPT)N4以上か、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)200点以上です。技能実習2号を良好に修了した人は、試験が免除される場合もあります。

技人国で働いている方は、日本語試験の基準(N4以上など)をすでに満たしていることが多いため、準備の中心は技能試験になります。

ステップ3:受け入れの準備を整える

申請の前に、会社側で次の3つを整えます。

  • 特定技能雇用契約を結ぶ
  • 1号特定技能外国人支援計画を作成する(登録支援機関に委託する場合は委託契約も結ぶ)
  • 分野別の協議会に加入する

ステップ4:地方出入国在留管理官署に申請する

在留資格変更許可申請書に、試験の合格証明、雇用契約書、支援計画などを添えて申請します。
必要書類は分野ごとに異なるため、入管庁の「特定技能」のページで分野別の書類一覧を確認してください。

ステップ5:家族の手続きも同時に確認する

配偶者や子が「家族滞在」で在留している場合、本人の変更とあわせて家族の在留資格も検討が必要です。

いつ始めるべきか

技人国の在留期限が近づいてから準備を始めると、試験の日程が間に合わないことがあります。次の更新期限から逆算し、早めに動き始めてください。

他の分野の埋まり具合

分野受け入れ枠在留者数埋まっている割合
外食業50,000人49,060人98.1%(停止中)
飲食料品製造業133,500人100,769人75.5%
建設76,000人52,132人68.6%
介護126,900人79,884人63.0%
農業73,300人44,050人60.1%
全分野の合計805,700人425,961人52.9%
出典:出入国在留管理庁「特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年6月末時点・速報値)」

外食業は、発表から停止まで2週間半でした。切り替え先の分野が閉じるのは、思っているより早いということです。

11. 技人国から特定技能への変更に関するよくある質問

Q1.4月の改正で今、技人国で働いている社員の在留資格が取り消されることはありますか?

A. 改正で変わったのは、申請の際の審査の扱いです。改正を理由に、いまの在留資格がすぐに取り消されるものではありません。
影響が出るのは、次の在留期間の更新や、在留資格の変更を申請するときです。

ただし、改正とは関係なく、技人国に当たらない仕事を主にしている状態が続いている場合は注意が必要です。入管庁は、本来の在留資格に基づく活動を行っていない場合には、在留資格を取り消される場合があるとしています。現場の仕事が中心になっている社員がいる場合は、次の更新を待たずに、仕事の内容を見直すか、特定技能への変更を検討してください。

Q2.更新のときも、語学力の資料が必要ですか?

A. 以前から継続して同じ業務内容に従事している場合は、提出を要しないとされています。ただし、業務内容の変更や転職により主に言語能力を用いた業務に従事することになった場合は、更新時に提出が必要です。

Q3.特定技能に変えれば、どんな仕事でも任せられますか?

A. いいえ。特定技能も分野ごとに従事できる業務が定められています。取得した分野以外の仕事はできません。

Q4.家族が「家族滞在」で日本にいる場合はどうなりますか?

A. 本人が特定技能1号に変わると、「家族滞在」の前提がなくなります。変更前から日本で暮らしている配偶者・子は、「特定活動」への変更で在留を続けられる場合がありますが、個別の審査になります。変更の申請前に、家族の手続きもあわせて確認してください。

Q5.技人国から特定技能への変更は、どのくらい増えているのですか?

A.変更件数の統計は公表されていません。特定技能全体の在留者数は、2025年末に390,296人(前年末比105,830人増)と大きく伸びていますが、そのうち技人国から移った人の数は分かりません。

Q6.自社が過去に処分を受けている場合はどうなりますか?

A.特定技能や技能実習で欠格事由に該当し、受入停止となっている期間中は、技人国でも新たに外国人を受け入れることは原則として認められません。まず自社の処分履歴をご確認ください。

まとめ|技人国から特定技能への変更は仕事内容から判断しよう

技人国から特定技能への切り替えは、会社にとっては更新のリスクを下げる手段です。
一方で本人にとっては、家族と暮らす条件、日本にいられる期間、永住までの道のりが変わる選択でもあります。

切り替えるかどうかは、「技人国が厳しくなったから」という理由だけで決めず、外国人社員が実際にしている仕事と、切り替えで外国人社員の在留期間、家族、永住がどう変わるかを確かめたうえで判断してください。

まずは、いま雇っている外国人社員の業務内容と、次の更新期限を確認するところから始めてください。

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榎本

榎本

外国人雇用労務士

元政治家秘書として約10年、官公庁向けの書類作成や点検に携わった経歴を持つ。
「表舞台より裏方が好き」という性分から、現在はお客様を陰からサポートする立場で活動中。
人の名前を覚えることが得意(自称)で、人と人とのつながりを何より大切にしている。
外国人雇用の複雑な制度も、現場目線でわかりやすくお伝えします。